寄居剣道連盟  百錬自得

 
 
 
 
 

 穏やかな陽気が続いておりますが、寒さは着実に進行してきており、じわりじわりと冬の足音が聞こえてきます。寒暖の差が微妙です。わずかな変化でも気をつけないと体調を崩す原因となりますのでご注意ください。

 わずかな変化と言うと、先日フランスのパリでテロ事件が発生し、世界的に警戒が強まっています。日本国内でも他人事ではなくなってきました。警察や自衛隊、消防などをはじめ関係機関でもすでに対策が進められていることと思いますが、何と言ってもテロは「無差別」です。いつどこで何が起こるかわかりません。一般市民の私たちが常日頃から周囲に目を光らせ、「わずかな変化」でも見逃さないように気を配る必要があると思います。

 相手の動きを未然に察知することは剣道の奥義でもあります。特に人混みの中での不穏な動きや、ご近所での怪しい人や物の動きにいち早く気付くことが、災いを最小限に抑えることにつながるのではないかと思います。今までのような安心安全な日本を守っていくためには、誰かが守ってくれるのではなく、自らの安全は自分で守るという一人ひとりの自覚が求められてくるのではないかと感じています。気を引き締め直して日々の生活を営んでまいりましょう。

 さて、話は本会の稽古に移りますが、昨晩(11月21日)の稽古では一般が約20名、中学生が約10名と計約30名程度の賑わいでした。何よりもうれしかったのは、元気な中学生たちが戻ってきたことです。先週から今週にかけて試験週間だったそうです。その前には新人戦の県大会も経験してきました。県大会の結果は奮いませんでしたが、そこで得てきたものは大きかったようです。少なくとも私が昨晩稽古した中学生は皆それぞれに以前とはちょっと違う意気込みが感じられ、大きく成長していると感じました。これからまだまだ伸びる可能性を感じます。この冬の取り組みを期待しています。

 また、次週には審査週間を控え、審査に臨む先生方の稽古にも意欲が感じられます。特に四・五段に臨まれる先生方には、早い時間から道場入りし日本剣道形の稽古に取り組まれ、稽古を終えたあとにもさらに形の稽古に明け暮れていました。うまくいくかどうかよりも、少なくともこうした姿勢が審査に現れてくることでしょう。ご武運をお祈りします。

 そして今日(11月22日)は、第60回埼玉県剣道大会(一般の部)でした。会場は上尾市にある埼玉県立武道館でした。

 本会からは女子の部に1名、四段以下の部に3名、五〜七段の部に1名、計5名が出場しました。特に四段以下の部では、初剣リバ剣の二段2名が初めてこの大会に出場しました。無鉄砲というか、向こう見ずというか、命知らずというかヾ(・・;) その意気込みに敬服いたしました。

 大会では開会に先立って、先日亡くなられた埼剣連の前会長、野澤先生を悼んで来場者全員で黙祷を捧げました。その後、開会式では今年度から新たに埼剣連の会長に就任した豊島先生の開会のごあいさつに続き、本大会では恒例となっている埼剣連名誉会長の大久保先生の講話がありました。式次第ではご来賓のあいさつとなっておりますが、毎回示唆に富んだお話をいただいているので、ちょっとした講話の時間のように感じております。

 その大久保先生のお話、今年も身にしみるお言葉を賜りました。

 まずは、今年度新たに就任された豊島会長を全面的に支持するとエールを送るとともに、埼剣連全体の尽力を呼びかけておられました。

 続いて先の世界選手権大会の話に移り、日本チームの男子団体戦の決勝での試合ぶりに檄が飛びました。準決勝まで立派な試合を展開していた日本チームの副将、大将が引き分け戦法に出たことに対し、これは剣道としては非常に恥ずかしいことと諭しました。ご自身の若き日の修行時代に「引き分けは最も悪い」という教えを受けたという逸話を紹介され、さらに数年前に世界大会の現場の最高責任者としてご指導にあたった際には、候補選手の試合に引き分けが多いことに業を煮やし、総当り試合の際に、引き分けはマイナス20点、勝ちはプラス10点、負けはマイナス10点と下命したところ、試合内容がガラッと変わったとのお話をされました。

 なるほど、これには感服しました。引き分ければ両者にマイナス20点、たとえ勝負に出て負けたとしてもマイナス10点、あわよく勝てればプラス10点ですから、引き分けるくらいなら負けるほうがマシだ、でも勝てればもっといいわけですから、負けを覚悟でも思い切って勝負に出よう!という気持ちが強くなるでしょう。みごとな指導法だと感じました。

 さらに大久保先生のお話は、先の全日本選手権大会にも及びました。当日はテレビで放映されましたが、実に情けないとの酷評でした。私もこのブログの11月4日の記事で、かなり厳しい表現で批判した覚えがありますが、それとはまた違った視点からの指摘でした。そして、「正しい剣道を、正しい人間が、正しい技を使って、人間形成をしましょう。指導者はしっかりしてください」と戒めました。こんなお話を伺えただけでも、この大会に参加した意義がありました。

 さて、試合では、女子の部と四段以下の部では二回戦、三回戦へと勝ち上がった選手もいましたが、残念ながら上位進出はなりませんでした。あとはあえなく初戦敗退でしたが、それぞれにいい稽古をいただいてきました。特に初陣の二段2人は得るものが大きかっただろうと思います。二段の1人は開会式での大久保先生の言葉を守って、引き分けにならないようにと、積極的に大技で勝負に出ていったと言っていました。今回の経験を今後の稽古の中で活かして、さらなる飛躍につなげていきたいものです。選手の皆さんお疲れさまでした。

 後半の立合いの部では、近隣の馴染みの先生方も多数参加しており、また、県内の名立たる先生方も軒並み顔を揃えており、見応えのある立合いが散見されました。そして何よりも圧巻は最後の特別試合、八段の先生方の立合いです。充実した気合いと華麗な技の応酬に魅了されました。ここで見たもの感じたことも、今後の稽古に活かされていくことだろうと思います。

 また新たな気持ちで、この冬を迎えられそうです。

引き分けは負けより悪い!?…第60回埼玉県剣道大会で檄!!

平成27年11月22日日曜日

 
 
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