寄居剣道連盟 百錬自得
寄居剣道連盟 百錬自得
めっきり秋めいてきました。道ばたには彼岸花が真っ赤に咲き始めました。この彼岸花、曼珠沙華ともいうのだそうですが、不思議なことに背景はたいてい緑です。実り始めた稲の畑のあぜ道であったり、雑草の生い茂る道路脇であったりと、その緑の中に真紅の花弁が際立ちます。しかもその花弁の艶やかさ。真紅の赤にも相俟って燃え上がる炎のようでもあり、女性の神秘的な姿にも感じられ、思わず目を魅かれます。また、場所によってはコスモスも咲き始めています。気候が涼しくなってきただけでなく、こういった道ばたの風景にも秋の訪れを感じる今日このごろです。
さて、そんな秋の深まりを感じる9月半ばの水曜日の今日、二週前のこの記事でほのめかしましたが、大物ゲストがご来臨くださいました。昨年の春に八段に合格された森田智裕先生です。剣道八段と言えば合格率が1%にも満たない厳しい審査ですが、その難関を突破された先生に直々にご来訪いただきご指導を仰げるなど、なかなか得難い機会です。主な会員へは予め連絡がいっていたようで、普段は水曜稽古には顔を見せない先生も参加していました。平日ということもありあまり大人数ではありませんでしたが、参加状況は会長はじめ16名程度で、うち中高生が各1名参加していました。
普段は複数名参加している中学生が、この日ばかりは一人だけだったのが不思議でした。時期的に試験期間中だったのでしょうか。森田先生は高校の剣道部の顧問をなさっておられ、この日参加した高校生は現役の教え子ということでした。といっても町内の中学校の出身で、中学生の頃は本会の稽古にもよく参加していました。はじめ見たときには「どっかで見た顔だな」と思いましたが、紹介されて思い出しました。すっかり高校生らしくなって、立派に成長している姿に頼もしく思いました。そして、奇しくも今日参加していた中学生はその高校生の中学校の後輩でした。しかも来年は高校受験を迎える学年だそうです。どんな進路を考えているのかわかりませんが、稽古を終えたあとにはそんな話題にも少し花が咲いていました。
このたび森田先生にお出でいただけることになったのは、その高校生とは別に、その高校の剣道部に所属する町内の中学校出身の生徒がおり、そのお父さんが数年前から剣道を習い始め熱心に稽古に取り組んでいるのですが、そのお父さんが我が子の高校の行事で学校を訪れた際に森田先生にお会いし、「ぜひ今度寄居にいらして稽古をつけてください」というようなお願いをしたところ、快くお受けいただいたとうかがっております。おそらく改まったお願いではなく、校内でばったり行き会った際の立ち話の中でのお願いではなかろうかと察しますが、気さくなそのお人柄と、平日の夜にも関わらず遠路はるばるわざわざ寄居の地までお運びくださる心意気に敬服いたします。
稽古の内容は、講話、基本稽古、地稽古と3部構成になっていました。稽古会というよりは講習会です。会長の意向か事務局の計らいなのか、ただ稽古をお願いするだけでなく、せっかくの機会なので講話や基本指導をしていただこうという配慮でした。森田先生もお忙しい中、レジュメをご用意いただいたり、自校の剣道部の通信紙に本会への来訪について記されていたりと、その意気込みに恐縮しました。初めの講話では、恩師から得た貴重な体験やその教えなどについてのお話もあり、参加していた会員たちには60代70代の高齢の先生もおりましたが、そこから何かを学ぼうと熱心に聞き入っていました。
特に印象に残ったのは「体中剣」の教えです。森田先生は、参加した一人ひとりにその感覚を実演してみせてくださいました。そのあとの基本稽古でも、体中剣を意識したメン打ちの稽古をおこないましたが、聞く見る感じることと、実際にやってみることのむずかしさを感じながらの基本稽古でした。頭の中ではわかっているつもりでも、やってみるとできない、今日学んだことが、いつになったらできるようになるか、本当の意味でわかるようになるか、また新たな修行の始まりを感じました。
最後は全体で地稽古をおこないましたが、森田先生には全員が順次稽古をお願いしました。真っ先にかかっていたのは、本会ではいくぶん若手の部類に入る伸び盛りの六段でした。続いて先般六段に合格したやはり若手の六段が立ち向かいましたが、森田先生の前にその攻め手をことごとく封じられていました。しかし、それでも果敢に攻めかかっていく姿には、普段の稽古では感じられない勢いがありました。やはり元に立つ先生が違うと、かかる者の剣道も変わってくるものなのかと、自分の剣道を反省しながら先生の立合いを拝見しました。
私も稽古をお願いしましたが、太刀打ちできないことは承知の上でしたが、それでも、こちらを抑えることなく、のびのびと打たせておいて、自分はその上をいくという立合いには感銘を受けました。打てそうなので打っていくとギリギリのところで応じられる。もう少しだと思って出ていくとまたギリギリのところで先を取られている。あと少し、もう少しと必死でかかっているうちに、いつの間にやら一本が決まる。この一本は自分が決めたのではなく、先生が「よし!それだ!」と引き出してくださったものでしょう。まさに引き立て稽古だと感じました。
19:30から約1時間半でしたが、平日の夜とは思えない、とても長く有意義に感じました。わざわざお運びいただいた森田先生に厚く御礼申し上げますとともに、今日学んだことを今後の稽古で会得していけるようさらなる精進に努めたいと思います。
「体中剣」!教士八段、森田先生のご指導を仰ぐ!
平成27年9月16日水曜日